シマチビミミズ
Pheretima okutamaensis Ishizuka, 1999b: 38; Nakamura, 1999: 59; 南谷ら, 2012: 38; 柳戸・柳戸, 2016: 39.
Amynthas okutamaensis 坂井, 2004: 34.
タイプ標本
タイプ産地:Nippara Valley(東京都奥多摩町日原渓谷)
タイプ標本所在地:ホロタイプ 国立科学博物館 (NSMT-An 243)
パラタイプ 国立科学博物館 (NSMT-An 244)
形態
<外部形態>
全長 45–85(45–70 [原記載]、57–85 [坂井, 2004])mm、体幅 2.5–4.0(3.0–3.3 [原記載]、2.5–4.0 [坂井, 2004])mm、湿重 0.71–0.75 g (坂井, 2004)。体節数 70–86。
体色は背面は赤褐色で、剛毛線は明黄色。腹面は黄白色で、外見はシマミミズに似る。剛毛は第 7 体節で 40–52 本、第 20 体節で 40–48 本。
第一背孔は第 12/13 体節間溝。
受精嚢孔は2対で、第 6/7/8 体節間溝に開口する。受精嚢孔間距離は体周の約 1/2。環帯は第 14–16 体節を占める。雌性孔は第14体節の腹面中央に一つ開口する。性徴は大きく、第 18 体節の雄性孔を覆うように位置するが、解剖すると雄性孔と性徴ははっきりと区別できる。しばしば性徴を欠く。坂井 (2004) は第 7 体節にも性徴があり、また深溝型の外部表徴を持つとしているが、詳細は不明。坂井 (2004) の図 17 には、第 7 体節の腹面中央に 1 つの性徴のようなものが描かれている。また、受精嚢の横に生殖腺が描かれている。これらの関係は不明。雄性孔は突出し、雄性孔間距離は体周の約 1/3。
<内部形態>
隔膜は第 5/6/7/8 体節間でやや厚く、第 8/9/10 体節間で欠き、第 10/11/12/13/14 体節間で薄い。
腸は第 15 体節から開始する。腸盲嚢は指状型で、3–4 本の小嚢に分かれ、第 27 体節に開口し、前方に 2–4(3–4 [原記載]、2–3 [坂井, 2004])体節分伸びる。
受精嚢は大きく、2対で、第 7–8 体節にある。主嚢はシャベル型で、太い導管を持つ。副嚢の嚢状部は長いソーセージ型で捻れ、導管は細い。受精嚢導管の基部は強い繊維で覆われている。貯精嚢はとても大きく、第 11–14 体節に広がる。第 18 体節の生殖腺は瓶状複生殖腺で、太い導管と多数の嚢状部を持つが、しばしば生殖腺を欠く。摂護腺はとても大きく、第 14–23(17–22 [原記載]、14–23 [坂井, 2004]) 体節まで広がる。
分布
東京都から記載された後(Ishizuka, 1999b)、埼玉県(南谷ら, 2012, 2016; 柳戸・柳戸, 2016)、東京都(Ishizuka, 1999b; 石塚, 2001)、山梨県(石塚, 2001)、神奈川県(坂井, 2004)で見つかっている。
図:これまでに出版された文献に基づく、シマチビミミズの分布確認地点
備考
Blakemore (2003, 2010a, 2012b) は、疑問符付きでコヒダミミズのシノニムにしている。
坂井 (2004) は神奈川県からシマチビミミズを報告しているが、第 7 体節に性徴と外部表徴を持つため、これらが種内の地理的変異の範疇なのか、亜種として分けるべきなのか、別種とすべきなのか、今後の検討が必要である (南谷, 私見)。
シノニムリスト
Pheretima okutamaensis Ishizuka, 1999b: 38 シマチビミミズ. [形態記載]
Pheretima okutamaensis Nakamura, 1999: 59.
Amynthas okutamaensis 坂井, 2004: 34. [形態記載]
Pheretima okutamaensis 南谷ら, 2012: 38. [記述のみ]
Pheretima okutamaensis 柳戸・柳戸, 2016: 39. [記述のみ]
引用文献
Blakemore RJ, 2003. Japanese earthworms (Annelida: Oligochaeta): A review and checklist of species. Organisms Diversity and Evolution 11: 1-43.
Blakemore RJ, 2010a. Saga of Herr Hilgendorf's worms... In: Pavlíček T, Cardet P, Coşkun Y, Csuzdi C, (eds.), Advances in Earthworm Taxonomy IV (Annelida: Oligochaeta). Proceedings of the 4th International Oligochaeta Taxonomy Meeting Diyarbakir, 20-24 April, 2009. Zoology in the Middle East Supplementum 2. Kasparek Verlag, Heidelberg. pp. 7-22.
Blakemore, R.J., 2012b. Japanese earthworms revisited a decade on. Zoology in the Middle East 58 suppl 4: 15-22.
Ishizuka, K., 1999b. New species of the genus Pheretima s. lat. (Annelida, Oligochaeta, Megascolecidae) from Tokyo, Japan- species with manicate intestinal caeca. Bulletin of the National Science Museum (Japan). Series A. Zoology 25(1): 33-57.
石塚小太郎, 2001. 日本産フトミミズ属 (Genus Pheretima s. lat.) の分類学的研究. 成蹊大学一般研究報告 33(3): 1-125.
南谷幸雄, 中村修美, 金子信博, 石塚小太郎, 渡辺弘之, 伊藤雅道, 2012. 埼玉県長瀞町の大型陸棲貧毛類相. 埼玉県立自然の博物館研究報告 6: 37-42.
Nakamura Y, 1999. Checklist of earthworms of Pheretima genus group (Megascolecidae: Oligochaeta) of the world. Edaphologia 64: 1-78.
坂井宏行, 2004. 神奈川県内における陸生大型貧毛類フトミミズ科の生物多様性及び分布特性の解明. 横浜国立大学環境情報学府 修士論文.
柳戸信吾, 柳戸拓磨, 2016. 外秩父山地の大型陸棲貧毛類(ミミズ)相. 埼玉県立自然の博物館研究報告 10: 37-44.