ヤミゾヤマミミズ
タイプ標本
基産地:福島・茨城・栃木県にまたがる八溝山の標高 1022 m 地点(山頂)
タイプ標本所在地:不明
形態
<外部形態>
全長 136-177 mm で平均 151.5 mm、体幅 4 mm、体節数 117-136 で平均 129。
体色は明桃灰色で、皮膚は比較的薄い。
第一背孔は第 11/12 体節間溝。
受精囊孔は第 5/6/7/8/9 体節間溝にある。雄性孔は第 18 体節にあり、突出型。雄性孔間剛毛は 7-10 本で平均 8 本。雄性孔の縁は体壁よりも盛り上がる。第 17 体節の後半部と第 18 体節前半部にかけて、大きな性徴が 1 対あり、直径 2 x 1 mm ほど (Ohfuchi, 1935; 大淵, 1939)。性徴の頂部は隆起していて陥入しない (大淵, 1939)。
<内部形態>
腸盲嚢は突起状型で、第 28 体節に始まり第 24 体節まで達する。
貯精嚢は第 11-12 体節にある。受精囊の主嚢の表面は滑らかでやや平たい卵型で、長さ 2 mm。導管は 1.5 mm。副嚢は主嚢導管に開口し、主嚢の 2 倍位の長さ。第 8-9 体節の受精囊の副嚢は特にねじ曲がるが、第 6-7 体節の副嚢は直線的。摂護腺はよく発達し、5 体節分を占める。胞状生殖腺がよく目立つ。
Pheretima yamizoyamensis (=Amynthas yamizoyamensis) の雄性孔と性徴(原記載図) (Ohfuchi, 1935, p. 414, fig. 7 より)
Pheretima yamizoyamensis (=Amynthas yamizoyamensis) の受精囊(原記載図) (Ohfuchi, 1935, p. 414, fig. 9 より)
Pheretima yamizoyamensis (=Amynthas yamizoyamensis) の摂護腺と生殖腺(原記載図) (Ohfuchi, 1935, p. 414, fig. 8 より)
Pheretima yamizoyamensis (=Amynthas yamizoyamensis) の腸盲嚢(原記載図) (Ohfuchi, 1935, p. 414, fig. 10 より)
分布
大淵・山口 (1947) は和名をヤミゾヤマミミズとした。
Ohfuchi (1935) によって八溝山で記録された 1 例があるのみ。加藤 (1972) は「毎年数回調査に行っているが、20年間まだ生息地を確認できないでいる」と述べている。上平 (2011) は八溝山を含む茨城県内多数の地点でミミズの採集を行ったが、本種を発見していない。
備考
Easton (1981) は日本のミミズ総説の中で、本種を疑問符付きでヒナミミズのシノニムとした。その後、Blakemore (2003, 2007) は括弧と疑問符付きで、Blakemore (2012b) では疑問符付きでヒナミミズのシノニムとした。さらに、Blakemore (2012e) はヒナミミズの再記載を行い、本種を再び独立種とみなしている。
本種の分類学的位置を確定させるためには、本種のタイプ標本が行方不明であるため、今後、基産地から新たな標本を得て、分子系統学的解析を含む多面的な検討を行うことが必要である。
シノニムリスト
Pheretima yamizoyamensis Ohfuchi, 1935: 413. [形態記載]
Pheretima yamizoyamensis Ohfuchi, 1937b: 133. [記述のみ]
Pheretima yamizoyamensis Ohfuchi, 1938b: 178. [記述のみ]
Pheretima yamizoyamensis 大淵, 1939: 401. [記述のみ]
Pheretima yamizoyamensis 大淵・山口, 1947: 1365. [同定形質のみ]
Pheretima yamizoyamensis 加藤, 1972: 555 ヤミゾヤマミミズ. [同定形質のみ] (Apr 25, 1972)
Pheretima yamizoyamaensis [sic] 上平, 1973a: 56. ヤミゾヤマミミズ [同定形質のみ] (?, 1973)
Pheretima yamizoyamensis Ishizuka, 1999a: 67. [記述のみ]
Amynthas yamizoyamensis Blakemore, 2012e: 145. [同定形質のみ]
引用文献
Blakemore RJ, 2003. Japanese earthworms (Annelida: Oligochaeta): A review and checklist of species. Organisms Diversity and Evolution 3 Electr. Suppl. 11: 1-43.
Blakemore RJ, 2012b. Japanese earthworms revisited a decade on. Zoology in the Middle East 58 suppl 4: 15-22.
Blakemore RJ, 2012e. New earthworm species from NIBR's Jeju-do biosphere compared to historical and new Japanese types (Oligochaeta: Megadrilacea: Megascolecidae). Journal of Species Research 1(2): 133-150.
Easton EG, 1981. Japanese earthworms: A synopsis of the Megadrile species (Oligochaeta). Bulletin of the British Museum (Natural History), Zoology 40(2): 33-65.
Ishizuka, K., 1999a. A review of the genus Pheretima s. lat. (Megascolecidae) from Japan. Edaphologia (62): 55-80.
上平幸好, 1973a. 日本産陸棲貧毛類フトミミズ属(Genus Pheretima), 種の検索表. 函館大学論究 7: 53-69.
加藤仁, 1972. ミミズ. In: 栃木県の動物と植物編纂委員会 (編), 栃木県の動物と植物. 下野新聞社, 宇都宮. pp. 545-556.
Ohfuchi S., 1935. On some new species of earthworms from north-eastern Hondo, Japan. The Science Reports of the Tohoku Imperial University, 4th series (Biology) 10(2): 409-415.
Ohfuchi, S., 1937b. On the species possessing four pairs of spermathecae in the genus Pheretima together with the variability of some external and internal characters. Saito Ho-on Kai Museum of Natural History, Research Bulletin 12: 31-136.
大淵眞龍,
1938b. 本州東北部に於ける Pheretima 属に就て. 動物学雑誌 50(4): 177-178.
大淵眞龍, 1939. 日本産 Pheretima 属に於ける Genital Papillae の位置及び数の変異とその組織学的構造. 吉田博士祝賀記念誌 pp. 392-413.
大淵眞龍, 山口英二, 1947. 環形動物貧毛綱. In: 内田清之助 (ed.), 新日本動物図鑑. 北隆館, 東京. pp. 1352-1371.