チャイナミミズ
Pheretima leucocirca [non Chen, 1933] Ohfuchi, 1956: 174; 上平, 1973a: 58.
タイプ標本
基産地:西表島周辺の沖神島(Sonai, Okikamijima (沖神島) Iriomote, Yaeyama district.) ただし、仲御神島?(備考を参照)
タイプ標本所在地:紛失?
形態
<外部形態>
全長 130-155 mm、体幅 5-6 mm、体節数 110-130。
体色は、フォルマリン液浸標本では背面が褐色、腹面が明色。環帯は明チョコレート色。
剛毛は第 7 体節で 42-46 本、第 20 体節で 55-60 本。第一背孔は第 11/12 または 12/13 体節間溝。
環帯は第 14-16 体節の 3 体節を占め、剛毛や背孔を欠く。受精囊孔は 3 対で第 6/7/8/9 体節間溝。受精囊孔域には性徴はないと本文で述べているが、生殖腺が存在しており、外部からは見えなかった可能性がある。雄性孔は第 18 体節にあり、2-3 枚の円盤上に乳頭状に突出する。雄性孔間距離は体周の 1/3。雄性孔間剛毛は 14-16 本。性徴は雄性孔に近接してやや内側の剛毛線前後に 1 個ずつある。
<内部形態>
隔膜は第 6/7/8/9 体節間はとても厚く、第 9/10 体節間で欠き、第 10/11/12/13 体節間で薄い。
腸管は第 16 体節から開始する。腸盲嚢は突起状型で鋸歯状の小突起を欠き、第 27 体節から第 24 体節まで伸びる。
受精囊は 3 対で、第 7-9 体節にあり、主嚢はやや平たく、長さ 3 mm、幅 2 mm で、導管は太短い。受精囊の副嚢の嚢状部は楕円形に膨れ、長さ 2 mm。受精囊付近に 3-4 個の生殖腺がある。精巣は第 10-11 体節、貯精嚢は第11-12 体節。摂護腺はとても大きく、第 16-20 体節の 5 体節を占め、3 つの小嚢に別れる。摂護腺の導管はとても長く、耳朶の形に折れ曲がる。
分布
沖神島で採集されたタイプ標本以外の記録はない。
備考
Ohfuchi (1956) は、沖神島から得た標本を元に、中国で記載されたチャイナミミズ A. leucocirca (Chen, 1933) として報告した。そもそも、沖神島は西表島周辺からは見つからず、西表島南方 16 km にある仲御神島の誤記かも知れない。
チャイナミミズの形態は Ohfuchi (1956) のものとは異なり、一致しないために別種であると考えられる。Chen (1933) による A. leucocircus の形態は以下の通り。受精囊孔は 3 対で、第 6/7/8/9 体節間溝。雄性孔は突出型で、円形平板状。2-3 個の性徴があり、雄性孔内側に近接して剛毛線前後に 1 個ずつ、もしくは雄性孔を十字型に取り巻くように上下左右に 1 個ずつ。受精囊孔付近には、第 7-8 体節の腹側中央、剛毛線より後ろ側に 1 個ずつ、第 8 体節の剛毛線より前の左右に 1 個ずつ存在し、まれに剛毛線より後ろにも存在する。
Ohfuchi (1956) の受精囊孔域の性徴の分布ははっきりしないが、図示された受精囊に近接した 3 個の性徴の分布は、明らかに別種にしてよいほどの差である。また、雄性孔域の性徴の分布、Chen (1933) によって B として描かれた図に似ているものの雄性孔よりはずっと小さく描かれており、同大として描かれた Ohfuchi (1956) の図は疑問が残る。
Ohfuchi (1956) の報告後、多くの研究者は Ohfuchi (1956) の誤同定として、コンジキミミズのシノニムとしている (Easton, 1981; Blakemore, 2003, 2008d, 2012b)。しかし、性徴の分布が明らかに異なるため、コンジキミミズとも別種であると考えられる。さらに、中国産のチャイナミミズとも別種であると考えられる。このため、新たな標本を得て新種記載をすべきであろう。それまでは、間違った種名のもとではあるが、この名前を使用し続けたい (南谷, 私見)。
シノニムリスト
Pheretima leucocirca Ohfuchi, 1956: 174 [non Chen, 1933]. [形態記載]
Pheretima leucocirca 上平, 1973a: 58 チャイナミミズ. [同定形質のみ] (?, 1973)
引用文献
Blakemore, R.J., 2003. Japanese earthworms (Annelida: Oligochaeta): A review and checklist of species. Organisms Diversity and Evolution 11: 1-43.
Blakemore, R.J., 2008d. A review of Japanese earthworms after Blakemore (2003). In: Ito MT, Kaneko N, (eds.), A Series of Searchable Texts on Earthworm Biodiversity, Ecology and Systematics from Various Regions of the World, 2nd Edition (2006) and Supplemental. COE soil Ecology Research Group, Yokohama National University, Japan. CD-ROM Publication.
Blakemore, R.J., 2012b. Japanese earthworms revisited a decade on. Zoology in the Middle East 58 suppl 4: 15-22.Chen, Y., 1933. A preliminary survey of the earthworms of the lower Yangtze Valley. Contribution from the Biological Laboratory of the Science Society of China, Zoological Series 9(6): 178-296.
Easton, E.G., 1981. Japanese earthworms: A synopsis of the Megadrile species (Oligochaeta). Bulletin of the British Museum Natural History (Zoology) 40(2): 33-65.
Ishizuka, K., 1999a. A review of the genus Pheretima s. lat. (Megascolecidae) from Japan. Edaphologia (62): 55-80.
上平幸好, 1973a. 日本産陸棲貧毛類フトミミズ属(Genus Pheretima), 種の検索表. 函館大学論究 7: 53-69.
Ohfuchi, S., 1956. On a collection of the terrestrial oligochaeta obtained from the various localities in Ryu-Kiu Islands, together with the consideration of their geographical distribution (Part 1). Journal of Agricultural Science, Tokyo Nogyo Daigaku 3(1): 131-176.
Sims, R.W., Easton, E.G., 1972. A numerical revision of the earthworm genus Pheretima auct. (Megascolecidae: Oligochaeta) with the recognition of new genera and an appendix on the earthworms collected by the Royal Society North Borneo Expeditions. Biological Journal of the Linnean Society 4: 169-268.