ケイコクミミズ
Pheretima surcata Ishizuka, 1999b: 48; 石塚, 2001: ##; 柳戸・柳戸, 2016: 40; 南谷, 2016: ##.
Amynthas surcatus Blakemore, 2003: 7; 安藤ら, 2007: 124, 2008b: 147.
タイプ標本
タイプ産地:Nippara Valley(東京都奥多摩町 日原渓谷)
タイプ標本所在地:ホロタイプ 国立科学博物館(NSMT-An-253)
パラタイプ 国立科学博物館(NSMT-An-254)
形態
<外部形態>
全長 60–125 mm、体幅 4.0–5.0 mm。体節数 54–99。
体色は、背面は赤褐色で、腹面は灰白色。
剛毛数は第 7 体節で 47–48 本、第 20 体節で 51–56 本。
第一背孔は第 12/13 体節間溝に開口する。
受精嚢孔は 2 対で、第 6/7/8 体節間溝にあり、受精嚢孔間距離は体周の約 1/3。性徴は小粒型性徴であり、第 7–8 体節の剛毛線より前と、第 18 体節の雄性孔に隣接して剛毛線より前に 1 対ある。なお、Ishizuka(1999b)の図より雄性孔付近の性徴は 2 対。環帯は第 14–16 体節を占める。雌性孔は第 14 体節の腹面中央に開口する。雄性孔は突出型で、中型で、第 18 体節に開口する。雄性孔間距離は体周の約 1/3。
<内部形態>
隔膜は、第 5/6/7/8 体節間ではやや厚く、第 8/9/10 体節間では欠き、第 10/11/12/13/14 体節間では繊細。
腸は第 15 体節から開始する。腸盲嚢は指状型で、4–6 本の小嚢に分かれ、第 27 体節に開口し、4–5 体節前方へ伸びる。
受精嚢は 2 対で、第 7–8 体節にあり、主嚢はシャベル型で、導管を持つ。副嚢は細い導管を持ち、末端はソーセージ型で捩れる。2 タイプの生殖腺を持ち、瓶状単生殖腺と、瓶状複生殖腺がある。生殖腺の導管は性徴につながっている。貯精嚢は背面を第 11–12 体節まで広がる。摂護腺は第 16–20 体節にあり、導管は雄性孔に接続する。
分布
東京都と埼玉県で記録されている(Ishizuka, 1999b; 石塚, 2001; 安藤ら, 2007, 2008b; 柳戸・柳戸, 2016; 南谷, 2016)。
図 これまでに出版された文献に基づく、ケイコクミミズの分布確認地点。
備考
Blakemore(2003addenda)でタッピミミズのシノニムにされた。その後、Blakemore(2010a)は疑問符付きでフキソクミミズのシノニムにしたが、括弧と疑問符付きでタッピミミズのシノニムリストの中にも記述している。一方で、Blakemore(2012b)では再び疑問符付きでタッピミミズのシノニムとし、フキソクミミズのシノニムとはしていない。このように Blakemore 氏の見解は一定していない。
ケイコクミミズはすべての個体が雄性孔を保有しており、性徴の分布も安定しており、フキソクミミズとは明らかに別種である。今後、タッピミミズのトポタイプ標本を得て、形態学的・分子系統学的再検討が必要である。
引用文献
安藤麻菜, 菅原泉, 河原輝彦, 2007. 林相の違いによるミミズの現存量と種組成. 関東森林研究 (58): 123-126.
安藤麻菜, 喜多知代, 河原輝彦, 菅原泉, 2008b. 針葉樹人工林と広葉樹二次林とのミミズ群集の比較. 東京農業大学農学集報 53(2): 144-151.
Blakemore RJ, 2003. Japanese earthworms (Annelida: Oligochaeta): A review and checklist of species. Organisms Diversity and Evolution 11: 1-43.
Blakemore RJ, 2010a. Saga of Herr Hilgendorf's worms... In: Pavlíček T, Cardet P, Coşkun Y, Csuzdi C, (eds.), Advances in Earthworm Taxonomy IV (Annelida: Oligochaeta). Proceedings of the 4th International Oligochaeta Taxonomy Meeting Diyarbakir, 20-24 April, 2009. Zoology in the Middle East Supplementum 2. Kasparek Verlag, Heidelberg. pp. 7-22.
Blakemore, R.J., 2012b. Japanese earthworms revisited a decade on. Zoology in the Middle East 58 suppl 4: 15-22.
Ishizuka, K., 1999b. New species of the genus Pheretima s. lat. (Annelida, Oligochaeta, Megascolecidae) from Tokyo, Japan- species with manicate intestinal caeca. Bulletin of the National Science Museum (Japan). Series A. Zoology 25(1): 33-57.
石塚小太郎, 2001. 日本産フトミミズ属 (Genus Pheretima s. lat.) の分類学的研究. 成蹊大学一般研究報告 33(3): 1-125.
南谷幸雄, 2016. 秩父地方の大型陸棲貧毛類(ミミズ)相. 埼玉県立自然の博物館研究報告 10: 45-52.
Nakamura Y, 1999. Checklist of earthworms of Pheretima genus group (Megascolecidae: Oligochaeta) of the world. Edaphologia 64: 1-78.
柳戸信吾, 柳戸拓磨, 2016. 外秩父山地の大型陸棲貧毛類(ミミズ)相. 埼玉県立自然の博物館研究報告 10: 37-44.