イシカワミミズ

 フトミミズ科アズマフトミミズ属イシカワミミズ Amynthas ishikawai (Ohfuchi, 1941)

Pheretima ishikawai Ohfuchi, 1941b: 248; 小林, 1941c: 260; 大淵・山口, 1947: 1356, 1965: 550; 上平, 1973a: 60; Ishizuka, 1999a: 61.

Amynthas ishikawai Sims & Easton, 1972: 236.

 

タイプ標本

基産地:高知県三宝山の龍河洞 (現:高知県香美市土佐山田町逆川 龍河洞)

タイプ標本所在地:不明

形態

<外部形態>

 全長 47-65 mm、体幅 2.3-2.8 mm、体節数 60-72。第一背孔は第 12/13 体節間溝に始まる。

 体色は淡色で沈着がなく、背面と腹面は同色。皮膚が薄いため、外皮を通じて背行血管や貯精嚢が透けて見える。

 剛毛は第 7 体節で 40 本、第 20 本で 44-45 本。

 受精囊孔は 1 対で第 5/6 体節間溝にある。環帯は第 14-16 体節の 3 体節分を占め、剛毛や体節間溝、背孔を欠く。雄性孔は第 18 体節の体側にあり、楕円形で体表からやや盛り上がる。雄性孔の縁は体表から明らかに盛り上がり、雄性孔間剛毛は 1-2 本。性徴は全くない。

 

<内部形態>

 隔膜は第 6/7/8 体節間は厚く、第 8/9/10 体節間では欠き、第 10/11/12/13/14/15/16 体節間では厚い。

 腸管は第 16 体節から始まる。腸盲嚢は単純状型で第 27 体節に開口し、第 24 体節まで達する。腸盲嚢の腹側・背側とも隔膜で締め付けられてくびれる。

 受精囊は 1 対で、第 6 体節にあり、受精囊の主嚢はやや平たい卵型で、長さ 1.7 mm、幅 1.3 mm で導管は主嚢嚢状部の 1/2 程度。受精囊の副嚢は細く、主嚢と同長で 2.3 mm ほどで、ネジ曲がらずまっすぐ。副嚢の先端は丸い袋状に膨らむ。精巣は第 10-11 体節にある。貯精嚢はよく発達し、第 11-12 体節を占め、前側の嚢は背面・腹面とも完全につながり、ドーナツ型。卵巣は 1 対で小さく、第 12/13 体節間隔膜の背面に付着する。摂護腺は長さ 2.3 mm で、第 15-21 体節の 7 体節分を占め、導管は外部からは見えない。

 

イシカワミミズの形態

Pheretima ishikawai (=Amynthas ishikawai) の形態 (原記載図) (Ohfuchi, 1941b p. 249, fig. 5 より)


生息環境

 龍河洞は、全長 4 km の石灰岩鍾乳洞で、主洞は 1 km の深さがある。3 つの入り口がある内の東側洞窟の入口から 160 m のところで、キクガシラコウモリ Rhinolophus ferrumequinum の糞が堆積した場所に生息している (Ohfuchi, 1941b)。

 Ohfuchi (1941b) は本種は完全な洞窟生活者であるとしている。

備考

 大淵・山口 (1947) は和名をイシカワミミズとしている。

 

 Gates (1972) はシバミミズと形態学的に識別できないことを指摘し、Easton (1981) により本種はシバミミズのシノニムとされた。その後も、シバミミズのシノニムとされることが多い。一方で、シンガポールで採集された minimus の形態を検討した Shen & Yeo (2005) は、体サイズが大きく、剛毛数が少ないものの体後部に向かうに連れて徐々に多くなり、貯精嚢がよく発達すること、摂護腺も大きく、その導管は太く直線的であることから、本種は独立種であるとした。

 今後、新たな標本を得て、分子系統学的手法を含めた再検討することが必要である。

シノニムリスト

Pheretima ishikawai Ohfuchi, 1941b: 248. [形態記載]

Pheretima ishikawai 小林, 1941c: 260. [記述のみ]

Pheretima ishikawai 大淵・山口, 1947: 1356. [同定形質のみ]

Pheretima ishikawai 大淵・山口, 1965: 550. [同定形質のみ]

Amynthas ishikawai Sims & Easton, 1972: 236. [記述のみ] (Sep ?, 1972)

Pheretima ishikawai 上平, 1973a: 60 イシカワミミズ. [同定形質のみ] (?, 1973)

Pheretima ishikawai Ishizuka, 1999a: 61. [記述のみ]

引用文献

Blakemore, R.J., 2003. Japanese earthworms (Annelida: Oligochaeta): A review and checklist of species. Organisms Diversity and Evolution 11: 1-43.

Blakemore, R.J., 2008d. A review of Japanese earthworms after Blakemore (2003). In: Ito MT, Kaneko N, (eds.), A Series of Searchable Texts on Earthworm Biodiversity, Ecology and Systematics from Various Regions of the World, 2nd Edition (2006) and Supplemental. COE soil Ecology Research Group, Yokohama National University, Japan. CD-ROM Publication.

Blakemore, R.J., 2012b. Japanese earthworms revisited a decade on. Zoology in the Middle East 58 suppl 4: 15-22.

 

Easton, E.G., 1981. Japanese earthworms: A synopsis of the Megadrile species (Oligochaeta). Bulletin of the British Museum Natural History (Zoology) 40(2): 33-65.

Ishizuka, K., 1999a. A review of the genus Pheretima s. lat. (Megascolecidae) from Japan. Edaphologia (62): 55-80.

上平幸好, 1973a. 日本産陸棲貧毛類フトミミズ属(Genus Pheretima), 種の検索表. 函館大学論究 7: 53-69.

小林新二郎, 1941c. 四国、中国、近畿及中部諸地方の陸棲貧毛類に就て. 動物学雑誌 53(5): 258-266.

Ohfuchi, S., 1941b. The cavernicolous oligochaeta of Japan. I. The Science Reports of the Tohoku Imperial University, 4th series (Biology) 16: 243-256.

大淵龍, 山口英二, 1947. 環形動物貧毛綱. In: 内田清之助 (ed.), 新日本動物図鑑. 北隆館, 東京. pp. 1352-1371.

大淵真龍, 山口英二, 1965. 環形動物 貧毛綱. In: 内田亨 (編), 新日本動物図鑑 上. 北隆館、東京 p.533-563.

Sims, R.W., Easton, E.G., 1972. A numerical revision of the earthworm genus Pheretima auct. (Megascolecidae: Oligochaeta) with the recognition of new genera and an appendix on the earthworms collected by the Royal Society North Borneo Expeditions. Biological Journal of the Linnean Society 4: 169-268.