ヤマミミズ

 フトミミズ科 > アズマフトミミズ属 > ヤマミミズ Amynthas nonmontanus Blakemore, 2010

Pheretima montana Ishizuka, 1999c: 103.

Pheretima montivaga 石塚, 2001: ###

  Amynthas montivaga 坂井, 2004: 26.

  Amynthas montivagus 安藤ら, 2008a: 201.

Amynthas nonmontanus Blakemore, 2010: 193.

タイプ標本

タイプ産地:Ohtanba Valley(東京都奥多摩町 大丹波渓谷)

タイプ標本所在地:ホロタイプ 国立科学博物館(NSMT-An-263)

         パラタイプ 国立科学博物館(NSMT-An-264)

形態

<外部形態>

 全長 148–248 mm、体幅 6.2–8.6 mm、体節数 126–132。

 体色は、背面は暗赤褐色で、腹面は明赤褐色。

 剛毛数は、第 7 体節で 52–57 本、第 20 体節で 66–72 本。

 第一背孔は第 12/13 体節間溝に開口する。

 受精嚢孔は 4 対で、第 5/6/7/8/9 体節間溝に開口し、受精嚢孔間距離は体周の約 1/4。性徴を欠く。環帯は第 14–16 体節を占める。雌性孔は第 14 体節の腹面中央に開口する。雄性孔は突出型で、小さな円形平板状で、第 18 体節に開口する。雄性孔間距離は体周の約 1/4。

 

<内部形態>

 隔膜は、第 5/6/7/8 体節ではとても厚く、第 8/9/10 体節で欠き、第 10/11/12/13/14 体節でとても厚い。

 腸管は第 15 体節から開始する。腸盲嚢は鋸歯状型で、第 27 体節に開口し、前方に 4 体節分伸びる。

 受精嚢は 4 対で第 6–9 体節にあり、主嚢はシャベル型で、太い導管を持つ。副嚢の嚢状部はソーセージ型で、細く捻れた導管を持つ。生殖腺を欠く。貯精嚢は大きく、第 11–12 体節に広がる。摂護腺は大きく、第 16–21 体節に広がり、導管は雄性孔につながる。

 

 

分布

 東京都(Ishizuka, 1999c; 石塚, 2001)と山梨県(安藤ら, 2008a)、神奈川県(坂井, 2004)で記録されている。

 

 なお、静岡県の記録は他の記録とはきわめて隔絶しているため、今後の検証が必要である(南谷, 私見)

図 これまでに出版された文献に基づく、ヤマミミズの分布確認地点。


備考

 Ishizuka(1999)によって新種記載された際に用いられた種小名 montana は、一次同名(ホモニム)であり、Kinberg(1867)によって記載された Pheretima montana にすでに使用されていた。このため、Blakemore(2010b)によって置換名 nonmontanus が提案された。

 なお、石塚(2001)は本種の種小名として montigava を使用しているものの、montana との関係が明示されておらず、国際命名規約上の手続きとして不適格である(Blakemore, 2010)

 

 Blakemore(2003, 2012b)は本種をコクショクミミズのシノニムとした。本種は性徴を欠くため、独立種だと考えられるが、今後の形態学的・分子系統学的再検討が必要である。

引用文献

安藤麻菜, 山中理恵子, 米山枢, 菅原泉, 上原厳, 佐藤明, 2008a. 林齢の異なるスギ人工林におけるミミズの個体数密度と種組成. 関東森林研究 (59): 199-202.

Blakemore RJ, 2003. Japanese earthworms (Annelida: Oligochaeta): A review and checklist of species. Organisms Diversity and Evolution 11: 1-43.

Blakemore RJ, 2010b. Unravelling some Kinki earthworms (Annelida: Oligochaeta, Megadrili: Megascolecidae)- Part II. Opuscula Zoologica, Budapest 41(2): 191-206.

Blakemore, R.J., 2012b. Japanese earthworms revisited a decade on. Zoology in the Middle East 58 suppl 4: 15-22.

Ishizuka, K., 1999b. New species of the genus Pheretima s. lat. (Annelida, Oligochaeta, Megascolecidae) from Tokyo, Japan- species with manicate intestinal caeca. Bulletin of the National Science Museum (Japan). Series A. Zoology 25(1): 33-57.

石塚小太郎, 2001. 日本産フトミミズ属 (Genus Pheretima s. lat.) の分類学的研究. 成蹊大学一般研究報告 33(3): 1-125.

坂井宏行, 2004. 神奈川県内における陸生大型貧毛類フトミミズ科の生物多様性及び分布特性の解明. 横浜国立大学環境情報学府 修士論文.