ミネダニミミズ

 フトミミズ科 > アズマフトミミズ属 > ミネダニミミズ Amynthas verticosus (Kinberg, 1866)

Pheretima verticosa Ishizuka, 1999b: 50; Nakamura, 1999: 59; 石塚, 2001: ##; 南谷, 2016: ##.

  Amynthas verticosa [sic] 上平, 2020b: 12.

タイプ標本

タイプ産地:Mizune Valley(東京都奥多摩町 水根渓谷)

タイプ標本所在地:ホロタイプ 国立科学博物館 (NSMT-An 255)

         パラタイプ 国立科学博物館 (NSMT-An 256)

形態

<外部形態>

 全長 70–100 mm、体幅 3.5–5.2 mm。体節数 80–90。

 体色は背面は赤褐色で、腹面は黄白色。剛毛は第 7 体節で 36–40 本、第 20 体節で 50–54 本。

 第一背孔は第 12/13 体節間溝。

 受精嚢孔は2対で、第 6/7/8 体節間溝に開口する。受精嚢孔間距離は体周の約 1/3。環帯は第 14–16 体節を占める。雌性孔は 1 つで、第14体節の腹面中央に開口する。性徴は小さく、第 7–8 体節の剛毛線より前に各 1 対と、第 18 体節の雄性孔に隣接して剛毛線前後に 1 対ずつある。雄性孔は突出型で、中程度のサイズの円形平板状。雄性孔間距離は体周の約 1/3。

 

<内部形態>

 隔膜は第 5/6/7/8 体節間でやや厚く、第 8/9/10 体節間で欠き、第 10/11/12/13/14 体節間で繊細。

 は第 15 体節から開始する。腸盲嚢は指状型で、3–4 本の小嚢に分かれ、第 27 体節に開口し、前方に 3–4体節分伸びる。

 受精嚢は大きく、2対で、第 7–8 体節にある。主嚢はシャベル型で、導管を持つ。副嚢の末端はトウガラシ型で、細い導管を持つ。生殖腺は大きく発達し、体表の性徴につながっている。第 7–8 体節の生殖腺は瓶状単生殖腺であり、1 つの生殖腺が1 つの性徴につながっている。第 18 体節では、複数の瓶状副生殖腺が、1 つの性徴につながっている。貯精嚢は大きく、第 10–15 体節に広がる。摂護腺は第 16–23 体節に広がり、雄性孔につながっている。

 

 

分布

 東京都(Ishizuka, 1999b; 石塚, 2001)と埼玉県(南谷, 2016)、神奈川県(上平, 2020b)で分布が記録されている。

 

 ただし、東京都では主に多摩川の北岸に分布しており、南岸ではごく稀(石塚, 2001)。さらに、埼玉県では秩父市中津川周辺のみ(南谷, 2016)、神奈川県では遠く隔たった 2 地点でのみ確認されている(上平, 2020b)。これらの間の地点では、それなりにミミズの調査が行われているにも関わらず、本種の分布に広い空白がある。きわめて不思議な分布パターンであるため、今後の検証が必要である。

図:これまでに出版された文献に基づく、ミネダニミミズの分布確認地点


備考

 Blakemore(2003, 2010a)は、フキソクミミズのシノニムにした。その後、Blakemore(2012b)Amynthas parvicystis を独立種とし、本種を疑問符付きで A. parvicystis とフキソクミミズの両方のシノニムとしており、どちらのシノニムにすべきか、扱いは不明である。

 ただし、性徴や受精嚢孔の分布が異なるため、これらのシノニムとすべきではない(南谷, 私見)

引用文献

Blakemore RJ, 2003. Japanese earthworms (Annelida: Oligochaeta): A review and checklist of species. Organisms Diversity and Evolution 11: 1-43.

Blakemore RJ, 2010a. Saga of Herr Hilgendorf's worms... In: Pavlíček T, Cardet P, Coşkun Y, Csuzdi C, (eds.), Advances in Earthworm Taxonomy IV (Annelida: Oligochaeta). Proceedings of the 4th International Oligochaeta Taxonomy Meeting Diyarbakir, 20-24 April, 2009. Zoology in the Middle East Supplementum 2. Kasparek Verlag, Heidelberg. pp. 7-22.

Blakemore, R.J., 2012b. Japanese earthworms revisited a decade on. Zoology in the Middle East 58 suppl 4: 15-22.

Ishizuka, K., 1999b. New species of the genus Pheretima s. lat. (Annelida, Oligochaeta, Megascolecidae) from Tokyo, Japan- species with manicate intestinal caeca. Bulletin of the National Science Museum (Japan). Series A. Zoology 25(1): 33-57.

石塚小太郎, 2001. 日本産フトミミズ属 (Genus Pheretima s. lat.) の分類学的研究. 成蹊大学一般研究報告 33(3): 1-125.

上平幸好, 2020b. 関東地方における陸棲貧毛類の調査報告V ー神奈川県で採集された種類と分布ー. 函館短期大学紀要 47: 11–18.

南谷幸雄, 2016. 秩父地方の大型陸棲貧毛類(ミミズ)相. 埼玉県立自然の博物館研究報告 10: 45-52.

Nakamura Y, 1999. Checklist of earthworms of Pheretima genus group (Megascolecidae: Oligochaeta) of the world. Edaphologia 64: 1-78.