ホソスジミミズ

 フトミミズ科 > フクロフトミミズ属 > ホソスジミミズ Metaphire striata (Ishizuka, 1999)

Pheretima striata Ishizuka, 1999b: 53; Nakamura, 1999: 63; 石塚, 2001: ##; 南谷ら, 2010b: 116, 2013: 3, 2015: 86; 上平, 2015a: 41.

  Metaphire striata 坂井, 2004: 69.

  Amynthas striata [sic] 上平, 2016b: 21, 2020b: 12.

  Amynthas striatus 南谷, 2017: 15.

タイプ標本

タイプ産地:Mt. Mitake(東京都青梅市 御岳山)

タイプ標本所在地:ホロタイプ 国立科学博物館 (NSMT-An 259)

         パラタイプ 国立科学博物館 (NSMT-An 260)

形態

<外部形態>

全長 110–165 mm、体幅 5.0–8.0 mm。体節数 90–105。

 体色は背面・腹面とも黄褐色で、体節間溝に赤褐色の帯があるため、縞模様に見える。第 6–8 体節は二重・三重環節となり、生体時にはこの部分が肉色を帯びる。

 剛毛は第 7 体節で 55–60 本、第 20 体節で 58–65 本。

 第一背孔は第 12/13 体節間溝。

 受精嚢孔は 3 対で、第 5/6/7/8 体節間溝に開口する。受精嚢孔間距離は体周の約 2/5。環帯は第 14–16 体節を占める。雌性孔は 1 つで、第14体節の腹面中央に開口する。性徴を欠くが、第 6–8 体節の腹面に深溝型の外部表徴を持つ。雄性孔は大きな切り株型で、第 17/18 体節間溝から第 18 体節の剛毛線より前に広がる。雄性孔間距離は体周の約 1/3。雄性孔保有率は低く、東京では 3 %の個体しか雄性孔を持っていない。

 

<内部形態>

 隔膜は第 5/6/7/8 体節間で厚く、第 8/9/10 体節間で欠き、第 10/11/12/13/14 体節間でやや厚い。

 は第 15 体節から開始する。腸盲嚢は指状型で、6–9 本の小嚢に分かれ、第 27 体節に開口し、前方に 4 体節分伸びる。

 受精嚢は大きく、3 対で、第 6–8 体節にある。主嚢はシャベル型で、太い導管を持つ。副嚢の末端はソーセージ型で捻れ、細い導管を持つ。貯精嚢は大きく、第 11–12 体節に広がる。摂護腺は第 17–20 体節に広がり、雄性孔につながっている。摂護腺は雄性孔を持つ個体にのみ見られる。生殖腺を欠く。

 

 

分布

 青森県から三重県にかけて記録されている(Ishizuka, 1999b; 石塚, 2001; 坂井, 2004; 南谷ら, 2010b, 2013, 2015; 上平, 2015a, 2016b, 2020b; 南谷, 2017)

図:これまでに出版された文献に基づく、ホソスジミミズの分布確認地点


備考

 Blakemore(2003, 2012b)は本種をハタケミミズのシノニムとしたが、Blakemore(2010a)は疑問符付きでハタケミミズのシノニムとした。

 これら 2 種は、体色や外部表徴、雄性孔の形態が異なるため、明らかに別種である(南谷, 私見)

引用文献

Blakemore RJ, 2003. Japanese earthworms (Annelida: Oligochaeta): A review and checklist of species. Organisms Diversity and Evolution 11: 1-43.

Blakemore RJ, 2010a. Saga of Herr Hilgendorf's worms... In: Pavlíček T, Cardet P, Coşkun Y, Csuzdi C, (eds.), Advances in Earthworm Taxonomy IV (Annelida: Oligochaeta). Proceedings of the 4th International Oligochaeta Taxonomy Meeting Diyarbakir, 20-24 April, 2009. Zoology in the Middle East Supplementum 2. Kasparek Verlag, Heidelberg. pp. 7-22.

Blakemore, R.J., 2012b. Japanese earthworms revisited a decade on. Zoology in the Middle East 58 suppl 4: 15-22.

Ishizuka, K., 1999b. New species of the genus Pheretima s. lat. (Annelida, Oligochaeta, Megascolecidae) from Tokyo, Japan- species with manicate intestinal caeca. Bulletin of the National Science Museum (Japan). Series A. Zoology 25(1): 33-57.

石塚小太郎, 2001. 日本産フトミミズ属 (Genus Pheretima s. lat.) の分類学的研究. 成蹊大学一般研究報告 33(3): 1-125.

上平幸好, 2015a. 中部地方における陸棲貧毛類の調査報告 IV. ー長野県で採集された種類と分布ー. 函館短期大学紀要 41: 39–48.

上平幸好, 2016b. 中部地方における陸棲貧毛類の調査報告 V. ー静岡県で採集された種類と分布ー. 函館短期大学紀要 42: 19–29.

上平幸好, 2020b. 関東地方における陸棲貧毛類の調査報告V ー神奈川県で採集された種類と分布ー. 函館短期大学紀要 47: 11–18.

南谷幸雄, 2017. 日光の陸棲大型貧毛類(ミミズ)相. 栃木県立博物館研究紀要 34: 13-20.

南谷幸雄, 田村芙美子, 鳥居春己, 前田喜四雄, 2010b. 近畿地方における大型陸棲貧毛類相. 関西自然保護機構会誌 32(2): 113-125.

南谷幸雄, 丹羽慈, 本間航介, 金子信博, 2013. 佐渡の大型陸生貧毛類(ミミズ)相:新潟県本土と比較して. 埼玉県立自然の博物館研究報告 7: 67-78.

南谷幸雄, 池田紘, 金子信博, 2015. 青森県の陸生大型貧毛類(ミミズ)相. 青森自然誌研究 20: 81-90.

Nakamura Y, 1999. Checklist of earthworms of Pheretima genus group (Megascolecidae: Oligochaeta) of the world. Edaphologia 64: 1-78.

坂井宏行, 2004. 神奈川県内における陸生大型貧毛類フトミミズ科の生物多様性及び分布特性の解明. 横浜国立大学環境情報学府 修士論文.